最終更新日:2026年8月15日

騒音・悪臭被害から発電所の廃炉まで

京都府福知山市では、パーム油を燃料とするバイオマス発電所が実際に建設され、稼働しました。

しかし稼働後、周辺住民から騒音や悪臭、睡眠への影響、体調不良など、深刻な生活環境上の問題が訴えられるようになりました。

私たちが舞鶴で計画されていた大規模パーム油火力発電所の問題を、自分たちの暮らしに直結する問題として捉えることができたのも、福知山で実際に起きていた被害と、住民の方々による告発があったからです。

福知山の住民が声を上げてくれた。

その声を舞鶴の私たちが聞いた。

そしてFoE Japan、ウータン・森と生活を考える会などの環境NGOとも問題を共有した。

その結果、舞鶴では発電所が建設される前に活動を始めることができました。

福知山の実例が、舞鶴を動かした。

これは、舞鶴のパーム油火力発電所計画撤退を語るうえで欠かすことのできない事実です。

そして舞鶴の計画撤退後、今度は舞鶴西地区の環境を考える会と環境NGOが、福知山の問題解決へ力を注ぎました。

私たちは当時、

「福知山の問題が解決して初めて、舞鶴のパーム油発電問題も本当の意味で終わる」

と考えていました。

福知山と舞鶴。

別々に始まった二つの問題は、やがて一つの活動になっていきました。


福知山で稼働したパーム油発電所

福知山市土師新町では、三恵エナジーによるパーム油を燃料とするバイオマス発電所が稼働しました。

当サイトに残る経過記録では、2017年から発電所が稼働し、その後、周辺住民から騒音、悪臭、黒煙などについて訴えが出るようになった経緯を記録しています。

パーム油は植物由来であるため、当時のFIT制度ではバイオマス燃料として扱われていました。

しかし、制度上「再生可能エネルギー」と位置付けられていることと、実際に発電所周辺で暮らす住民の生活環境が守られることは別の問題です。

福知山では、その問題が現実のものとなりました。


住民を苦しめた騒音と悪臭

発電所周辺では、エンジンによる継続的な騒音や重低音、悪臭などについて住民から訴えが相次ぎました。

2019年6月から8月にかけて、発電所周辺136軒を対象とした訪問聞き取り調査が行われました。

その結果、悪臭については、

気分不快・ストレス 75件

頭痛・めまい・嘔吐など 12件

騒音については、

ストレス・精神的不安 52件

不眠 14件

などの訴えが記録されています。こうした被害状況は、その後のNGOによる金融機関への要請資料などにも記載されています。

数字だけを見ると単なる「苦情」に見えるかもしれません。

しかし、実際に住民の方々から聞いたのは、

夜、音が気になって眠れない。

窓を開けられない。

臭いで気分が悪くなる。

自宅にいても落ち着けない。

という、日常生活そのものに関わる問題でした。

私たちは福知山の住民から直接その状況を聞き、パーム油発電が地域へ与える影響を具体的に理解するようになりました。


燃料のパーム油が住宅地へ流出

2019年2月には、発電所で使用されていたパーム油約7,000リットルが住宅地側の下水管などへ流出する事故も発生しました。当サイトの経過記録にも、この事故とその後の稼働停止について残しています。

福知山の問題は騒音や悪臭だけではありませんでした。

大量の燃料を取り扱う発電施設が住宅地の近くにあることについて、安全管理や事故発生時の対応という面からも考える必要がありました。


福知山市議会でも正式な問題に

住民は事業者だけでなく、福知山市や市議会にも対応を求めました。

2019年9月26日には、地域住民が提出したパーム油バイオマス発電所の悪臭・騒音問題への対策を求める請願が、福知山市議会で採択されたことが外部資料にも記録されています。

つまり福知山の問題は、一部の住民だけによる個人的な訴えではなく、市議会でも正式に取り上げられる地域課題になっていました。


福知山の被害告発が舞鶴を動かした

同じ頃、舞鶴市では約66MWという大規模なパーム油火力発電所の建設計画が進んでいました。

私たち舞鶴の住民にとって、当初は発電所の規模や燃料、騒音などを資料から想像するしかありませんでした。

ところが、隣の福知山市では、すでにパーム油発電所が稼働し、住民が騒音や悪臭などの被害を訴えていました。

福知山の住民が、

「実際にはこういうことが起きています」

と自分たちの経験を伝えてくれたことで、私たちは舞鶴の計画を現実の問題として捉えるようになりました。

もし福知山の方々が声を上げていなければ。

もし被害の実態を外部へ伝えていなければ。

舞鶴市民が、ここまで早い段階から計画を自分事として考えることは難しかったかもしれません。

福知山の住民による告発が、舞鶴を動かした。

そして、その実態がFoE Japanやウータン・森と生活を考える会などにも共有され、舞鶴の問題を一地域の建設計画ではなく、パーム油発電そのものの問題として考える活動へと広がりました。


福知山・舞鶴・NGOがつながる

福知山と舞鶴では、置かれていた状況が違いました。

福知山では、

すでに発電所が稼働し、被害が発生している。

舞鶴では、

これから大規模な発電所が建設されようとしている。

しかし、私たちは次第に二つの問題を別々のものとは考えなくなりました。

福知山の住民は実際の被害を伝える。

舞鶴の住民は、その経験をもとに建設前の計画を検証する。

FoE Japanやウータン・森と生活を考える会などは、熱帯林、生物多様性、気候変動、FIT制度、金融など、地域住民だけでは追いきれない問題を調査する。

こうして、

福知山の住民

舞鶴の住民

環境NGO

という連携が生まれました。


経済産業省・環境省へともに陳情

2020年1月には、舞鶴と福知山の住民がともに上京し、経済産業省や環境省へパーム油発電の問題を訴えました。

福知山では、すでに騒音や悪臭などの生活環境問題が発生している。

舞鶴では、その近隣でさらに大規模なパーム油発電所が計画されている。

この二つを一緒に国へ伝えることで、私たちはパーム油発電の問題をより具体的に説明することができました。

舞鶴西地区の環境を考える会の当時の記事にも、福知山の住民と交流し、ともに経済産業省・環境省へ陳情した経緯が残っています。


舞鶴の計画が撤退へ

2020年4月、舞鶴の発電事業に関わっていたAMPが事業から撤退しました。

さらに同年6月には、舞鶴の住民が日立造船の株主総会へ参加し、パーム油発電事業から撤退する方針を確認しました。

こうして、舞鶴で計画されていた大規模パーム油火力発電所は建設されることなく、計画撤退へ向かいました。

しかし、私たちはこれで活動が終わったとは考えませんでした。


舞鶴の計画撤退で活動は終わらなかった

舞鶴の発電所が建設されないことが明確になった一方で、福知山では住民が依然として騒音や悪臭などの問題を抱えていました。

舞鶴が建設を免れることができた大きな理由の一つは、福知山の住民が自分たちの被害を外へ伝えてくれたことです。

その福知山を残して、

「舞鶴は止まったから、私たちの活動は終わり」

とは考えられませんでした。

2020年10月、舞鶴西地区の環境を考える会は、舞鶴の計画撤退という本来の目的を達成した後も、**「福知山の公害問題も私たちの問題である」**との認識から会を存続させ、福知山の発電所の廃炉を目指して活動を続ける方針を明確にしています。

これは、当時の私たちの考えを非常によく表しています。


「福知山が解決して初めて、舞鶴も終わる」

当時の舞鶴西地区の環境を考える会と、ともに活動してきたNGOには共通した思いがありました。

福知山は舞鶴とともにある。

そして、

福知山の問題が解決して初めて、舞鶴のパーム油発電問題も本当の意味で終わる。

私たちはそう考えていました。

舞鶴の計画撤退後は、舞鶴で培った情報発信、行政への働きかけ、企業へのアプローチ、金融機関への働きかけ、NGOとのネットワークなどを、福知山の問題解決に生かしていきました。

これは一方的な「舞鶴による福知山支援」ではありません。

その前に、

福知山の住民が舞鶴を助けてくれた。

という経緯があったからです。


107人の住民が公害調停を申し立て

2020年7月30日、発電所周辺で被害を訴えていた107人の住民が京都府公害審査会へ公害調停を申し立てました。

単なる苦情ではありません。

多数の地域住民が正式な公害紛争処理制度を利用して問題解決を求める事態にまで発展していました。


廃炉を求める声が全国・海外へ

福知山の問題は地域の中だけにはとどまりませんでした。

発電所の廃炉を求めるオンライン署名には2,500件を超える賛同が集まりました。

さらにウータン・森と生活を考える会は、三恵エナジーや三恵グループとの金融関係が想定される金融機関に対して、ESGエンゲージメント強化と投資撤退を求める活動を行いました。

2020年8月の要請にはFoE Japan、グリーンピース・ジャパン、海外NGOなど多数の団体が賛同しています。

舞鶴で行った「事業者だけではなく、事業を支える金融・投資の側にも働きかける」という活動が、福知山でも生かされました。


私たちが目指したのは「改善」ではなく「廃炉」

福知山では長期間にわたり騒音や悪臭などの問題が続きました。

そのため、私たち舞鶴西地区の環境を考える会も、最終的には単なる騒音対策や設備改善ではなく、発電所そのものを廃炉にすることを目標として明確に掲げました。

当サイトには2020年10月時点で、

「三恵福知山バイオマス発電の廃炉運動をおこなう『舞鶴西地区の環境を考える会』」

として活動方針を公表した記事が残っています。

福知山の住民が安心して生活できる状態を取り戻すには、発電所が停止するだけでは十分ではない。

私たちはそう考えていました。


2020年12月 発電事業の廃止が発表される

2020年12月、三恵福知山バイオマス発電所を運営していた事業者が、発電事業を廃止することを発表しました。

NGO側の記録でも、住民による公害調停、議会での追及、金融機関への働きかけなどが続く中で、2020年12月に発電事業廃止が発表されたことが確認できます。

これは大きな前進でした。

しかし、私たちにとってまだ完全な終わりではありませんでした。

「事業をやめる」ことと、「発電施設そのものがなくなる」ことは別だからです。

私たちが目指していたのは、発電事業の休止や名目的な廃止ではなく、

発電所そのものの廃炉

でした。


2021年 発電施設そのものが廃炉へ

その後、福知山の三恵バイオマス発電所では、発電設備の撤去・廃炉工事が進められました。

そして2021年10月8日、当サイトは、

「三恵バイオマス発電所の廃炉工事が完了しました」

と報告しています。

これは単なる事業停止ではありません。

発電施設そのものが撤去され、再び同じ設備が稼働することのできない状態になった。

ここまで来て、初めて私たちは福知山のパーム油発電問題が大きな節目を迎えたと考えました。

三恵福知山バイオマス発電所
→ 発電事業廃止
→ 発電施設を撤去
→ 廃炉完了

この「廃炉まで実現した」という点は、福知山の活動を記録するうえで最も重要な到達点の一つです。

三恵福知山バイオマス発電所の廃炉工事完了の記事を見る


舞鶴と福知山 二つのストーリーが一つになった

舞鶴では、

発電所が建設される前に計画撤退。

福知山では、

実際に発電所が稼働し、住民被害が発生した後、最終的に施設そのものが廃炉。

二つの地域がたどった道は違いました。

しかし、その活動は途中から一つになっていました。

福知山の住民が声を上げたことで、舞鶴市民が危険性を理解した。

福知山の実例があったからこそ、舞鶴市民や環境NGOは問題を自分事として捉えることができた。

その結果、舞鶴では発電所が建設される前に計画撤退へつなげることができた。

そして舞鶴の計画撤退後は、舞鶴の住民とNGOが福知山の問題解決と廃炉へ力を注いだ。

福知山から舞鶴へ。
そして舞鶴から、再び福知山へ。

二つのストーリーは、最後には一つの大きな活動になりました。


発電所の廃炉で、本当の大団円へ

私たちにとって、舞鶴の計画撤退だけでは、この活動は終わっていませんでした。

福知山の発電事業廃止が発表された時点でも、まだ発電施設は存在していました。

私たちが目指したのは、

「もう運転しません」という約束ではなく、発電施設そのものをなくすこと。

そして2021年、発電設備の撤去・廃炉工事が完了しました。

舞鶴は建設前に計画撤退。

福知山は稼働した発電施設そのものを廃炉。

ここまで到達して初めて、

福知山と舞鶴、二つのパーム油発電問題が本当の意味で一つの大団円を迎えた

と、私たちは感じることができました。


ただし、被害がなかったことにはならない

廃炉になったからといって、福知山で起きたことが消えるわけではありません。

住民は長期間にわたり、騒音や悪臭など生活環境上の問題を訴え続けました。

多数の住民が公害調停を申し立てる事態にまで発展しました。

だからこそ、この出来事を単なる「勝利物語」として終わらせてはいけないと考えています。

重要なのは、

発電所ができてから問題を解決し、最後に廃炉まで持っていくことが、どれほど大変なのか。

という教訓を残すことです。


福知山から学んだ最大の教訓

福知山の経験から、私たちは強く学びました。

「建設されてからでは遅いことがある」

ということです。

事業者が「基準を満たしています」「問題ありません」と説明していても、実際に稼働した後に住民がどのような環境で暮らすことになるかは別の問題です。

だからこそ、新しい発電所が計画されたときには、建設前から、

他地域で同じ方式の発電所が稼働していないか。

そこで問題は起きていないか。

事業者の資料だけでなく、実際に暮らしている住民は何と言っているのか。

行政は十分に検証しているのか。

を確認する必要があります。

舞鶴で私たちが早い段階から行動できたのは、福知山がこのことを教えてくれたからです。


福知山・舞鶴の経験を全国へ

福知山と舞鶴で得た経験は、その後の全国各地のバイオマス発電問題への活動にもつながっていきました。

情報公開請求。

住民説明会資料の分析。

騒音や悪臭の記録。

行政や国への働きかけ。

企業への要請。

投資家・金融機関へのアプローチ。

環境NGOとの連携。

そして、必要な場合には事業停止だけでなく廃炉まで求めること。

こうした経験は、その後の石巻、田川、美作など各地の問題を考える際にも生かされています。


福知山パーム油発電問題 主な資料

当サイトの記録

パーム油火力発電所がおこした公害問題(京都府福知山市)

福知山パーム油発電所 騒音・悪臭による健康被害調査

三恵福知山バイオマス発電所 今までの経緯

発電所一時停止中の住民の状況

舞鶴西地区の環境を考える会が福知山の廃炉運動へ

三恵福知山バイオマス発電所 廃炉工事完了

外部参考資料

国際環境NGO FoE Japan

ウータン・森と生活を考える会

福知山パーム油発電所を運営する三恵エナジーの融資銀行への要請


このページについて

このページは、福知山の問題を第三者として紹介するために作ったものではありません。

私たちは舞鶴の活動を通じて、福知山の住民とともにパーム油発電問題に取り組んできました。

福知山の住民から被害の実態を教えてもらい、それを舞鶴での活動に生かした。

舞鶴の計画撤退後は、今度は福知山の問題解決、そして最終的な廃炉に向けてともに活動した。

その意味で、福知山と舞鶴の活動を切り離して考えることはできません。

このページでは、当サイトに残る当時の記事や資料を中心に、FoE Japan、ウータン・森と生活を考える会などの記録も照合しながら、当事者としてその経過を整理しています。

私たちが残したいのは、単なる「反対運動の成功例」ではありません。

福知山で被害を受けた住民が声を上げたことが舞鶴を守り、舞鶴の活動が再び福知山へ戻り、最後には発電施設そのものの廃炉まで実現した。

この一連の経験です。

同じ問題を別の地域で繰り返さないための記録として、このページを残します。


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