最終更新日:2026年8月16日
岐阜県恵那市明智町では、2021年に木質バイオマス発電所の建設計画が明らかになりました。
当時、私たちが確認した計画では、恵那市明智町1001-200付近、日本ガイシ工場近辺の耕作放棄地に木質チップを燃料とするバイオマス発電所を建設し、さらに発電所の排熱を利用したバナメイエビの陸上養殖施設を併設する構想が示されていました。
事業者については、当時の情報では名古屋市の株式会社エコテックによる計画とみられていましたが、計画の全体像や事業主体について、地元住民にも十分な情報が示されていない状態でした。
そのため、計画を知った地元住民は早い段階から問題意識を持ち、反対運動を開始しました。
そして地元住民から私たちへ相談が寄せられました。
私たちは舞鶴・福知山などでの経験をもとに、計画の調べ方、住民活動の進め方、事業者へ確認すべきポイントなどについてアドバイスを行いました。
その後、地元住民主体の活動が急速に進み、2021年6月には明智町でバイオマス発電に関する勉強会も開催されました。
最終的に、この2021年のエビ養殖施設併設型バイオマス発電計画は中止となりました。
→ 明智町の2021年バイオマス発電計画は中止
このケースも、美作と同様に、
計画初期に地元住民が素早く動いたこと
が非常に重要だった事例だと私たちは考えています。
木質バイオマス発電+バナメイエビ養殖という計画
明智町の計画で特徴的だったのが、
木質バイオマス発電
と、
排熱を利用したバナメイエビの陸上養殖
を組み合わせた事業構想です。
計画を好意的に整理すれば、
地域の木材を燃料として利用する
↓
再生可能エネルギーで発電する
↓
発電時に発生する排熱を捨てずに利用する
↓
排熱でバナメイエビを養殖する
↓
新たな地域産業や雇用を生み出す
という仕組みです。
一見すると、
森林資源の有効利用
再生可能エネルギー
排熱の有効利用
地域産業の創出
を組み合わせた、非常に環境配慮型の事業に見えます。
こうした地域循環型の構想そのものを、私たちは否定するものではありません。
しかし重要なのは、
本当に事業として成立するのか
という点です。
「排熱を利用する」だけでは事業は成立しない
発電所から熱が出るからといって、その熱をそのまま養殖に利用できるわけではありません。
バナメイエビを陸上養殖するためには、
養殖施設。
水槽。
熱交換設備。
配管。
ポンプ。
水温管理設備。
水質管理設備。
ろ過設備。
維持管理。
などが必要になります。
当然、大きな設備投資と維持費も必要です。
さらに重要なのが、
発電所が停止した場合どうするのか
という問題です。
バイオマス発電所は、
定期点検。
故障。
燃料不足。
設備トラブル。
などによって停止する可能性があります。
しかし、生き物を扱う養殖施設は、
「今日は発電所が止まったので水温も下げます」
というわけにはいきません。
そのため、別のバックアップ熱源を設けるのであれば、その設備費や燃料費も必要になります。
つまり、
「捨てられる排熱を使うから安い」
というほど単純な事業ではありません。
発電事業とエビ養殖事業、二つの採算性が必要
明智町の構想では、
バイオマス発電事業
だけでなく、
エビ養殖事業
も成立させる必要があります。
発電所の燃料を安定して調達できるのか。
発電事業として利益が出るのか。
養殖設備へ熱を供給するコストはいくらなのか。
バナメイエビを安定して生産できるのか。
生産したエビをどの価格で販売できるのか。
養殖施設の人件費や維持費を賄えるのか。
こうした条件がすべて成立して初めて、地域循環型事業として成り立ちます。
つまり、
「排熱を利用します」
という説明だけで、事業の環境性や採算性を評価することはできません。
環境配慮型に見える計画ほど、具体的に検証する
明智町や田川などの事例には共通点があります。
単純に、
「木を燃やして発電します」
という計画ではありません。
排熱利用。
農業。
養殖。
地域雇用。
森林整備。
などを組み合わせ、
「地域循環型の環境に良い事業」
として説明されています。
こうした計画は、環境面のメリットが強調されるため、単純な反対論だけでは問題点を伝えにくくなります。
だからこそ、
理念ではなく具体的な事業計画を見る
必要があります。
燃料はどこから集めるのか。
年間どれだけ必要なのか。
何年間確保できるのか。
排熱利用設備はいくらかかるのか。
誰が費用を負担するのか。
養殖事業は採算が取れるのか。
発電停止時はどうするのか。
こうした具体的な質問をして初めて、事業の実現可能性が見えてきます。
地元住民の動きは非常に早かった
明智町で特に重要だったのは、
住民の初動の速さ
です。
2021年4月26日の当サイトの記事には、計画の詳細がまだ十分明らかになっていない段階ですでに地元住民の反対運動が始まり、私たちへ相談が寄せられていたことが記録されています。
つまり、
計画の全貌が分かるまで何もしなかった
のではありません。
「近くにバイオマス発電所ができるらしい」
という段階から、
情報を集める。
近隣住民へ知らせる。
事業者について調べる。
反対意思を示す。
外部の経験者へ相談する。
という動きを始めました。
この早さは非常に重要です。
2021年6月には住民向け勉強会
住民からの相談を受け、その後、明智町ではバイオマス発電についての勉強会が開催されました。
勉強会には、
舞鶴西地区の環境を考える会
FoE Japan
ウータン・森と生活を考える会
が参加し、それぞれの立場からバイオマス発電の問題点や他地域での経験について説明しました。
重要なのは、
外部団体が明智町へ行って反対運動を始めたわけではない
ということです。
最初に地元住民が動きました。
その住民から相談を受けて、外部の経験者や環境NGOが知識や経験を提供しました。
この順番が重要です。
反対運動の主役は地元住民
私たちは全国のバイオマス発電問題に関わってきましたが、
反対運動の主役は地元住民であるべき
と考えています。
外部団体がいくら問題点を指摘しても、
「地域外の人が反対している」
と扱われる可能性があります。
しかし、
建設予定地のすぐ近くに暮らす住民が、
「この計画には納得できない」
「説明してほしい」
「私たちは反対している」
と声を上げれば、意味は大きく変わります。
明智町でも、
住民がまず動き、必要な知識を外部から取り入れる
という形になりました。
これは美作のケースにも共通しています。
初動が早ければ、事業者も早く判断できる
大型事業は、時間が経つほど撤退しにくくなります。
土地取得。
設計。
許認可。
融資。
設備発注。
工事契約。
こうした手続きが進めば進むほど、事業者がすでに投入した資金も増えます。
そうなると、
「ここまで投資したのだから簡単には撤退できない」
という状況になります。
逆に、まだ計画初期であれば、
地域住民の強い反対。
説明会への対応。
事業計画の再検討。
追加の環境対策。
スケジュール遅延。
といった事業リスクを早期に把握し、
「この場所では事業を進めるのが難しい」
と判断することもできます。
明智町では、住民側が計画初期から素早く動いたことが、事業者側の判断に影響した可能性があると私たちは考えています。
ただし、公開資料だけから、住民運動だけが中止の直接原因だったと断定するものではありません。
初動で大切なのは「地域の問題」にすること
計画が分かった直後に大切なのは、
その問題を地域の人に知ってもらうこと
です。
近隣住民へ知らせる。
自治会で話題にする。
署名を集める。
SNSで発信する。
地元新聞やテレビへ情報を伝える。
説明会を求める。
質問状を提出する。
こうした活動を通じて、
「一部の人だけが気にしている話」
から、
「地域全体で考える問題」
へ変えていくことが重要です。
行政や議員へ丸投げしない
計画が明らかになると、
「市役所へお願いしよう」
「地元議員に何とかしてもらおう」
と考える方も多いと思います。
もちろん、行政や議員の力は重要です。
行政指導。
条例。
許認可。
議会質問。
国への要望。
など、住民だけではできないことがあります。
しかし私たちは、初期段階から、
反対運動そのものを行政や特定の議員へ丸投げすることはおすすめしていません。
行政や議員には、それぞれ立場や既存政策、企業・地域との関係などがあります。
住民とまったく同じ立場、同じ速度で動けるとは限りません。
まず住民が主体となって動く。
↓
地域の問題になる。
↓
メディアや行政へ広がる。
↓
行政や議会の力を活用する。
この順番が重要だと考えています。
「簡単には進められない地域」と認識されること
事業者に対して嫌がらせをしたり、違法な妨害をしたりする必要はありません。
むしろ、合法的に、
質問する。
説明を求める。
資料を確認する。
署名を集める。
地元メディアへ情報を伝える。
行政へ問い合わせる。
という活動を続けます。
それだけでも事業者にとっては、
説明会。
追加調査。
住民対応。
計画修正。
スケジュール変更。
などが必要になります。
つまり、
その地域で事業を進めるための時間的・社会的コストが増える
ことになります。
企業は最終的には事業として成立するかどうかを判断します。
計画初期の段階で、
「この地域では簡単には事業を進められない」
と認識されることは、事業者の継続判断にも影響し得ます。
明智町は短期間で終わったため記録が少ない
明智町についてインターネットで調べても、現在残っている情報は決して多くありません。
これは、ある意味では反対運動が早い段階で終わったことの裏返しでもあります。
問題が長期化すると、
裁判。
行政との対立。
公害。
事故。
発電所停止。
などが発生し、報道も増えます。
ところが、
計画発覚
↓
住民がすぐ動く
↓
地域で反対運動
↓
計画が早期に中止
となれば、大きな社会問題になる前に終わります。
当然、報道量も少なくなります。
成功した反対運動ほど記録に残りにくい
これは明智町だけではありません。
私たちがこれまで相談を受けた案件でも、
計画初期に住民が動いたことで、比較的短期間で計画がなくなったケース
があります。
ところが、こうした成功例は意外と表に出ません。
住民側は、
「やっと終わった。もう嫌なことは忘れたい」
と思います。
事業者側も、
中止した案件を積極的に公表する理由はありません。
メディアも、発電所が建設されなければ、その後の記事を書き続けません。
その結果、
初動が早い
↓
早く解決する
↓
大きな問題にならない
↓
報道が少ない
↓
成功事例が知られない
ということが起こります。
だから明智町の記録を残す
私たちが明智町の事例を残す理由は、
活動実績を自慢するためではありません。
重要なのは、
「発電所が建つ前に住民は何をしたのか」
を次の地域へ伝えることです。
発電所が完成してから、
「どうすれば止められますか」
と相談を受けるのと、
まだ計画初期に、
「近所に発電所ができるという話を聞いたのですが、どうすればいいですか」
と相談を受けるのでは、取れる選択肢が大きく違います。
明智町は、
初動が早いほど、早い段階で問題を終わらせられる可能性がある
ことを示す事例です。
明智町と美作に共通するもの
2021年の明智町。
そして2024年の美作。
この二つの案件には大きな共通点があります。
計画の初期段階で住民から相談があった。
住民自身がすぐに動いた。
外部の経験者は主役ではなく支援役に回った。
地域で反対意思を明確にした。
発電所が建設される前に計画が終わった。
という点です。
一つの事例だけであれば、
「たまたま中止になった」
と見ることもできます。
しかし、複数の地域で同じような経験をすると、
住民の初期対応が非常に重要
だということが見えてきます。
美作バイオマス発電問題|住民主体の初動で建設計画を中止へ
なお、2022年には明智町で別のバイオマス計画
注意が必要なのは、2022年1月に明智町で別の木質バイオマス発電計画が報道されていることです。
この計画は明智町の工業団地内で、安藤林業、丸八、マルエイ、レッツによる共同企画として進められ、切り捨て間伐材や枝葉などを燃料とする内容でした。
これは、
2021年に当サイトへ相談があった「エビ養殖施設併設型」の計画とは、事業者構成・立地・内容が異なります。
そのため、このページでは両者を混同せず、
2021年のエビ養殖場併設型バイオマス発電計画
について記録しています。
明智町バイオマス発電問題 主な資料
当サイトの活動記録
岐阜県恵那市明智町バイオマス発電(エビ養殖場併設)計画の住民反対運動が始まりました
2021年4月26日の記事です。
計画地、木質チップ発電、バナメイエビ養殖施設の構想、地元住民から相談が寄せられた経緯などを記録しています。
明智町バイオマス発電カテゴリー
明智町バイオマス発電
当時の関連記録を確認できます。
勉強会映像
当時の住民向け勉強会の映像も残っています。
岐阜県恵那市明智町 バイオマス発電 勉強会
2022年の別計画
けいほううぇぶ「明智町にバイオマス発電所建設へ」
2022年に報道された別事業者による計画です。
このページで扱う2021年のエビ養殖場併設計画とは区別して扱います。
現在の状況
2021年 明智町バイオマス発電計画
場所:岐阜県恵那市明智町
方式:木質チップによるバイオマス発電
特徴:排熱を利用したバナメイエビ陸上養殖施設を併設する構想
地域住民:早期に反対運動を開始
外部支援:舞鶴西地区の環境を考える会、FoE Japan、ウータン・森と生活を考える会などが情報・経験を提供
→ 計画中止
明智町のケースは、計画初期から地元住民が動き、比較的短期間で問題が終わったため、現在残っている公開情報は多くありません。
しかし、だからこそ、
「早く動くことで、問題が大きくなる前に終わらせられる可能性がある」
ことを示す重要な記録として残します。
私たちが明智町から学んだこと
明智町から得た最大の教訓は、
初動が大切
ということです。
計画を知ったら、
まず地元で情報を共有する。
住民自身が動く。
反対意思を見える形にする。
事業者へ説明を求める。
地元メディアへ知らせる。
必要に応じて外部の経験者や専門家へ相談する。
行政や議員にも知らせる。
しかし、運動自体を他人任せにしない。
この初動が早ければ早いほど、事業が本格化する前に問題を解決できる可能性があります。
そして、
初動が早いほど早く終わる。
早く終わるほど大きなニュースにならない。
だから成功事例が世の中に残りにくい。
このことも、私たちは明智町や美作の経験から学びました。
バイオマス発電計画を知ったら、早めにご相談ください
近隣で突然、
「バイオマス発電所を建設する」
「再生可能エネルギーだから環境に良い」
「排熱を利用して地域産業を作る」
といった説明を受けても、それだけで事業の妥当性を判断する必要はありません。
重要なのは、
燃料調達。
採算性。
排熱利用。
設備費。
住民説明。
立地。
生活環境。
地域合意。
を具体的に確認することです。
そして何より、
まだ計画が固まっていない初期段階で動くこと
です。
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